2012/09/09

音圧を上げる方法

音圧を上げる…。DTMをしている人間なら少なからず関心のあるトピックだと思う。音圧を上げるという概念はよく耳にするが、今ひとつ音がどういう状態のことを指しているのか理解しづらい。
  • 音量と音圧は違うのか? 
  • 高い機材を使わないと実現できないのか?
もちろんUniversal Audioの様な効果なプラグインを使えは素晴らしい音になるのだろうが、ここではApple Logic Proに付属のプラグインで音圧上げを実現する為の考査をしてみる。これから使うプラグインは特別なものではなく、ごくごく普通なものばかり。したがって、使用するアプリはLogic Proでなくてもかまわない。ProToolsでもCubaseでも実現可能だ。


使用するプラグインエフェスト

音圧を上げる為に必要な機材は以下である。
  • コンプレッサー
  • EQ
  • リミッター

 「音圧を上げる」ということ

ここで、「音圧を上げる」ことを定義しようと思う。
ほぼすべてのDAWにはミキサーがついていると思うが、ミキサーのあるチャンネルに音を入力すると、レベルメーターが上がりdB(デシベル)という単位で表される。音楽で言うところの音圧を上げる行為というのは、処理を施す前と後でレベルメータが同じ値を指しているのに、音の聞こえ方が処理後の方が大きく聞こえる状態をいう。

例えば、処理前のスネアの音のレベルが-7dBだとしよう。
音圧を上げる処理を施して、聴感では音が大きく聞こえるようになったにもかかわらず、レベルメータは-7dBを示したまま、という状態を作り出すことを音楽で言うところの「音圧を上げる」処理ということになる。


手順1: 人間には聞こえない周波数をEQでカットする

 人間の耳に限らずあらゆる動物の耳には聴くことのできる周波数帯域と聞くことのできない周波数帯域がある。
人間で言えば、(個人差や特に年齢により振れ幅が大きいが)CDに記録可能な周波数帯域ではる。すなわち、20Hz〜20,000Hzまでが一般的に言われている人間が認識可能な周波数帯域である。
しかし、周波数アナライザーなどでベースやバスドラムなどの低域パートの音の周波数帯域を見てみると、以外に20Hz以下の帯域に音があることがわかる。
当然、この周波数帯域は人間には聞こえないので、EQでカットすべきである。
もう少し詳しく言うと、ベースの基本周波数帯域は50Hzまでなので、それ以下はそもそも楽器自体の音では無いので、カット対象になる。

手順2: コンプレッサーで音を底上げする

手順1で低域の音をカットしたので、聴感的には変化は無いのもも、ミキサーのレベルメータは処理前に比べて下がっているはずである。
今度は、コンプレッサーで音の底上げをする。
ここで気を付けなければならないのは、 ミキサーのレベルメータは変化させてはならないということ。これは先に説明した通りである。
コンプレッサーの設定は大体以下のように設定する。
  • Attack: できる限りミニマム
  • threshold: -9dB
  • Ratio: 30:1
  • Release: 290ms
Outputはレベルメータが処理前と同じであることを確認しつつ最大まで上げる。
ここまでで、レベルメータに変化がないのに、聴感として音が大きくなっているのがわかると思う。



手順3: リミッターで音が歪まない程度に音量を上げる

あとはリミッターで0dBまで音を上げる。どこまでGainをあげられるかは、音が歪まないところまでなら突っ込むことができると思う。

まとめ

これらの手順で音圧を上げるにあたって気を付けなければならないのは、途中で音の質やリズム感、雰囲気などがガラっと変わってしまったのに気づかずに作業を進めてしまうことである。
特にコンプレッサーはリズム感を変化させたり、音自体を劇的に変化させるエフェクトとしても使える為、やり過ぎると音圧は上がったが処理前とは似ても似つかない音になってしまっていることが多々ある。

この手順はあくまで音圧を上げることを目的にしている為に、やり過ぎには注意が必要である。

2012/08/22

Roland TB303をLogic Proのソフトシンセでエミュレートする

Roland TB303

機材の概要

1982年に発売開始された簡易シーケンス機能付きのシンセ。今現在では名機として幅広くDTMに取り入れられていて、特にアシッド・ハウスに大きな影響を与えたことで認知度が高いが、発売当初はそれほど販売数が伸びずすぐに販売停止になった。

その影響もあって入手するのに労力がいるし値段も高い。ヤフオクで調べて見ると、この記事を書いている現在¥148,000。

アシッド・ハウスのトラックメーカーがこの機材に目を付けた理由はその独特な使い方にある。非常に早い16分のシーケンスでところどころにポルタメントさせて、ベースより高い音程にセットし、レゾナンスを極端に上げる。このユニークな粘りのあるサウンドがトラックメーカー達にうけて、この機種のダンスミュージックにおける存在は大きなものになった。

セッティング

今回はこのRoland TB303をLogic Proのソフトセンセ「ES1」でエミュレートする方法を模索した。


ここではoscillatorの波形が重要なのでおさらい。

  1. ES1を立ちあげて、oscillatorを「ノコギリ波」にセットする。 (sawtoothは上の画像でセットされている波形)sub-oscillatorは使わないので、mixはwaveにしてください。(これも上の画像の通りです)元々、TB303には1つのoscillatorしか搭載されていないし、そのoscillatorはノコギリ波と矩形波の2つなので、矩形波にセットしてもよい。
  2.  oscillator rangeを「16」にセット。
  3. ES1の下に並んでいるVoicesを「Legato」にセットし、Glideのフェーダーを約1/3程上げる。
  4. ADSRの「A(アタック)」をものすごく早めにセットする。0にしてはいけないが、限りなく0に近いあたりがちょうどいいかも。
  5.  Amplifier(アンプ)を「Gate R」にセット。同時にLevel Via Velの上の方をトップに、下の方を2/3上げる。
  6. Filterを「12dB」にセットする。(TB303には18dBのFilterが搭載されているがこのセッティングの方がより音が近い。) ADSR via velは0と2時の方向にセットする。Driveは「0」にセットし、Keyはちょうど真ん中にセット。
  7. Analogを「100%」にセット。
  8. Int via WhlとInt via Velの両方のフェーダーをゼロにセットする。(TB303にはもともとADSR以外のモジュレーション機能は搭載されていないのでこれでOK。)

セットするとこんな感じ
ここまでで、TB303の音色をES1で再現することができる。あとやることはTB303に搭載されているシーケンサーでプログラミングされたようなシーケンスを再現すれば完全なエミュレーションとなる。

プログラミング

  1. 1小節分のリージョンをアレンジウィンドウに作成する。ピアノロールエディタでリージョンを開き、ペンシルツールでノートを書いていく。ベロシティとノートの長さは手を加える必要はない。デフォルトでベロシティは80だし長さは16分音符なので、理想的である。但し、間違っても和音を打ち込んではだめ。あくまで単音のみということをお忘れなく。
打ち込むノートはすべて同じ音程でも構わないが、TB303の特徴を再現するのであれば
  1. 各ノートの音程をばらす。
  2. ところどころ音を繋げる。
  3. アクセントを付ける。
ようにプログラミングするのが理想。

  1. 音を繋げるにはノートの右端をドラッグして伸ばし、次のノートと重ねてしまえば良い。
  2. アクセントを付けるのはすごく簡単。ベロシティが80なのを100にするのみ。これをすることで音が大きくなると同時に明るくなる。
こんな感じ

このプログラミングでTB303のシーケンサーを再現できた。あとは実際にプレイする際、以下のパラメータをいじるとTB303感がますのでオススメ。
  1. ADSRのDecay・Releaseのセッティング
  2. FilterのCutoffとResonanceの調整
  3.  Int vai Vel側のRouterを「Filter FM」にセットして、「Mod Envelope」の上のフェーダーを動かし、Filter Modulationを調整
  4.  ADSRのAttackを調整
以上でTB303のエミュレートは完成。あとはトラックを作るのみ!!